
太陽熱造水器(SHWP)は、太陽熱を利用して蒸留水を作る装置です。
日本ではなじみの薄い太陽熱造水器ですが、海外では多くの種類の太陽熱造水器が開発されており、アマゾン等でも販売されています。それではなぜ日本では太陽熱造水器の普及が進んでいないのでしょうか?
水資源の豊富さ: 日本は水資源に恵まれた国であり、一般的に水不足に悩まされることが少ないです。そのため、太陽熱造水器を導入する必要性が低いと感じられているかもしれません。
コスト: 太陽熱造水器の導入コストは、一般的な浄水器に比べて高いようです。このため、コストパフォーマンスを重視する日本の消費者からは、受け入れられにくい面があります。
地理的・気象的条件: 太陽熱造水器は、日照時間が長い地域での利用が適しています。日本は一年を通じて日照時間が短い地域が多いため、太陽エネルギーを効率的に利用するのが難しい場合があります。
以上のような理由から、日本では太陽熱造水器があまり普及していないと考えられます。日照時間や地理的条件は変えられませんが、コストについては検討の余地があります。お手ごろな価格で太陽熱造水器が手に入れば、普及にもつながって行くと期待されます。
太陽熱造水器は電気がなくても、太陽エネルギーがあれば蒸留水を作ることができる装置です。蒸留水は私たちの生活の中でも、意外とたくさんの場面で使われておりますが、災害時においても生活用水の備えとして、長期保存が可能な蒸留水は重要な役割を果たすと期待されます。そこで、バイオEORはこの素晴らしい可能性を秘めている太陽熱造水器を、日本でもぜひ普及させたいと考えました。
バイオEORでは、もっと多くの方々に太陽熱造水器を体験していただくことを目標に、市販品を組み合わせて自分でも簡単に作れる安価な太陽熱造水器の開発を行っています。
太陽熱を利用した蒸留水の製造は、古代から知られていました。
古代エジプトなどで、浅い容器に水を入れて太陽光を当て、水蒸気を収集する方法が使われていました。しかし、効率的な装置はまだ発展していませんでした。
19世紀になると、太陽熱を利用して水を蒸発させる装置の研究が活発化しました。これは主に海水の蒸留に関するもので、船舶などでの淡水確保のための技術が模索されました。
20世紀初頭になると、太陽熱を利用した水の蒸発装置が太陽蒸留器として商業利用されるようになりました。これは主に乾燥地域や海洋上での淡水確保に使用されました。
1970年代には、 エネルギー危機の影響を受け、再生可能エネルギー技術への関心が高まりました。太陽熱エネルギーの利用も再評価され、家庭用の太陽熱造水器の研究が進展しました。
現在、太陽電池パネルの進歩や新たな材料技術の導入により、効率的でコンパクトな家庭用太陽熱造水器が数多く開発されています。これにより、遠隔地や災害時などでの飲料水供給が向上しました。
家庭用太陽熱造水器は、持続可能な水資源確保やエネルギー効率の向上などの観点から、今後も技術の進化が期待される分野の一つです。しかし、日本では太陽熱造水器はまだあまりよく知られておりません。また、水は、私たちの生活に欠かせないものですが、蒸留水の用途についてもあまり知られていません。
家庭で蒸留水はさまざまな用途に活用されています。
蒸留プロセスによって純度の高い水が得られるため、特定の用途において重要な役割を果たしています。以下は、家庭における蒸留水の主な用途の例です。
更に、家庭用の太陽熱造水器は、災害時に非常に役立つツールとなると期待できます。
以下に、その役割や用途、効果について説明します。
以上のように、太陽熱造水器は災害時において持続可能で安全な水供給を確保する手段として大きな役割を果たすことができ、電力や供給網が不安定な状況下でも、その利便性と効果が期待できます。ただし、太陽熱造水器の性能は天候に左右されやすいため、飲料水供給のメインはタンクローリー等による災害地への輸送で、家庭用の造水器はそれを補完するものとして考えるべきでしょう。
これらの用途を通じて、今後、太陽熱造水器がもっと身近になり、災害時の生活用水の備えだけではなく、蒸留水のある豊かなライフスタイルを実現する技術として注目されてくると考えられます。
開発した太陽熱造水器の特徴
低コスト化への挑戦
一般にプラスチック製品は金型製作が高価となりますが、本受託研究では製作費を安くするため、造水器本体は市販の苗帽子を流用、内部には太陽熱を効率よく吸収し水分蒸発を促進する蒸発吸収体を内蔵しています。可動部分は殆どないため構造はシンプルで、部品の殆どはホームセンターなどで入手できます。これによって、新たに本体の金型設計・製作をすることなく、大幅な製造コストの削減に成功しました。
手軽で安価、シンプルで安全、内蔵の蒸発吸収体で高い造水量。
太陽熱造水器の構造はシンプルです。長さは67cm、重さも約1.5kg程度で誰でも扱える大きさです。造水器内部に内蔵された蒸発吸収体が太陽からの日射を受けて温められ、内部に湿った空気を作り結露水を生む仕組みで、条件が良ければ一日当たり約1リットルの蒸留水を作成できます。外気温は必ずしも高い必要はありません。必要なのは日光だけで、日照時間が長いと造水量も多くなります。
電源がないところでも蒸留水を作れる。
蒸留水作成のためのエネルギーは太陽からの日射だけです。日光さえあればどこでも手軽に蒸留水を作れます。
駐車場の空きスペースで:
マンションのベランダで;
庭や農作地の空きスペースで:
日当たりのよい部屋で:
蒸発吸収体の自由な発想によるDIYで用途拡大。
蒸発吸収体は原水より水分を毛細管現象で吸い上げ、太陽熱で加熱されることにより水分を蒸発させる機能を持っており、重要なパーツです。現在のところ、黒色濾紙や速乾生地、再生紙などが蒸発吸収体の材料に適していることがわかっています。
技術課題と製品化の展望
既製品を組み合わせて太陽熱造水器を作ることはコスト面では有利ですが、いくつかの点で限界があります。
造水器本体の透明なPETカバーは、夏季においては高温に晒されることから高い耐候性が要求されます。外気温が35℃を超えるような猛暑日では、造水器内部の気温は70℃を超え、PETカバーが変形する恐れがあります。また、気密性を保持するのが難しく、長期間の使用では水漏れ等が発生しやすくなり、耐久性の面では短期間の使用または災害時の緊急使用に限られます。
したがって、現行モデルは、エントリーモデルの位置づけであり、太陽熱造水器に興味があり購入後続けて長期使用するかどうかは分からないが、一度使ってみたいという方に向いています。将来的には、要求される性能に基づいた全体の材料設計の見直しを行い、より耐久性と品質に優れた普及モデルに移行する必要があると思われます。
今後は、製品化に向けた事業パートナーの探索を行うこと、太陽熱造水器についてお求めやすい価格でクラウドファンディング等を活用して体験していただき、社会一般に広く認知してもらい、多くの方々に興味を持っていただくことなどを目指したいと考えています。